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腐女子が叫ばずにはいられなかった萌(腐注意)を綴る掃き溜め的不定期ブログ。自分の萌はマイナーな気がする今日この頃。ボカロ多め。たまにオリキャラ出没します。
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前回が文量少なかったので同日投稿。
アズがもやもやしているうちに、リヴィウスはというと…
追記に置きます。



 太陽が傾き、黄昏の淡い光が王城を染める。
 国王崩御から3日、王宮もいくらか落ち着きを取り戻し、葬儀の準備を始めつつあった。
 書類の束を抱え、リヴィウスは人気のない廊下を足早に進む。後に宰相の発表した遺言状により、彼が王位を継げないことは公式に確定した。そのためこの先の火種になりかねない『元・第一王子』の動向に、周囲は目を光らせ思惑を巡らせている。しかし彼は反乱を企てるでもなく、また王兄として派閥を作るでもなく、新王の一臣下として淡々と動いていた。部屋に篭りきりの次期国王の代わりに『父の葬儀』を取り仕切る、その頬に涙のあとは見えない。
「そこにいたのか、リヴィウス」
 彼を引き止める声が、長い廊下の静寂を破った。振り返った先に親友を見つけ、リヴィウスは柔和に微笑む。それはアズハルトに見せたようなものではなく、おそらく、彼にとって最も自然な笑みだった。
「何だ、それは?」
「予想される葬儀列席者数と、その場合必要とされる諸経費、あとはそうだね……必要設備の手配書……と……」
 羊皮紙を読み上げていくと、有無を言わさず取り上げられる。眉をひそめて不満を表すと、お前は休め、とらしくない言葉がかけられた。
「でも、これは騎士の君の仕事じゃ…」
「お前の仕事でもない。祭儀官どもが面目を潰すぞ」
 これは他の奴にまかせる、とエミールは唇をゆがめる。リヴィウスのものとは性質の違う皮肉気な笑みだったが、そこには友人に対する気安さが含まれていた。
 ふいに手をのばし、短くなった友の銀髪に触れる。軽くすくようにして、不ぞろいな毛先を持ち上げると、
「ここまでするとは思わなかったな」
 ―――静かに、そう言った。
「男前になっただろう?」
「前より幼く見える」
 互いに冗談交じりの軽口をたたきあい、核心に触れることを避ける。常と変わらない親友の様子に、リヴィウスは体の力を抜いた。
「そんなに下手か? 僕は君と違って不器用だからな」
「鋏を使わないからだ。お前、短剣かなんかで適当に切っただろう?」
 無言の苦笑が肯定を告げる。呆れ顔でそれを理解すると、エミールは唇に悪戯な笑みを浮かべ、しかし、と言葉を続けた。髪を弄んでいた指を首筋にあて、耳元にささやく。
「これはこれで……色っぽいかもしれんな」
 温度の上がった首筋を撫で上げる指は、邪険に振り払われる。不機嫌をあらわにしてリヴィウスは毒づいた。
「そういう冗談は嫌いだ」
 冷ややかな視線を向け、ぞんざいに言い放つ。
 しかしその瞳に宿る嫌悪は、ここにいない誰かに向けられたものであると彼らは知っていた。 
「それに僕は、男も女も嫌いだ」
「そうだな」
 毒の強い言葉を、エミールは何食わぬ顔で受け止める。
「俺も男だが?」
「君は好きだよ。一応、友人だからね」
 からかい交じりの問いかけに、リヴィウスは不機嫌を崩してクスリと笑った。いつもこんな調子である。怒り続けているのも馬鹿らしい。

「では弟はどうだ?」

 しかし、続く言葉はリヴィウスを凍りつかせた。友人の常らしからぬ、答えに痛みを伴うような問い。もしかして、エミールは彼なりに焦っているのかもしれない、そう、今更ながらに思う。これは、彼にも告げていなかった行動だったから。
 視線を外してうつむく。それでも平静な声が憎らしかった。
 何種類もの答えが頭をよぎるが、何一つ真実と確信できるようなものは見つからない。
「……本当に、これでよかったのか?」
「違う」
 間髪いれずに反論する。
「勘違いするな…僕は、」
 ゆっくりと、うつむいた顔を上げる。エミールの瞳に映ったのは、

「僕はまだ、選んでいない」

 死刑囚の怯えを孕んだ、痛々しく強い目だった。

**

 何事もなかったように、濃青の上衣を翻してまた仕事へ行ってしまった友人の姿をエミールは見送る。混乱する周囲の中今まで平静を装っていたが、実のところ、自分だって友の真意はわからないのだ。
 何も知らない次期国王陛下との違いは、彼の胸にある選択肢のいくつかを知っているということ、だけである。
 そしてその選択肢の中には、自分と道を違えるものも存在していた。……かつて終焉を誓い合った友は、自分と同じ道をまた、選んでくれるのだろうか。
(どちらにせよ、だ)
 心の中で優柔不断な友の口癖を真似る。

(どちらにせよ、俺は………)


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