腐女子が叫ばずにはいられなかった萌(腐注意)を綴る掃き溜め的不定期ブログ。自分の萌はマイナーな気がする今日この頃。ボカロ多め。たまにオリキャラ出没します。
依存するくらい愛してる、なのか。
依存してるから愛してる、なのか。
もうやだこの兄弟。
依存してるから愛してる、なのか。
もうやだこの兄弟。
数日後、リヴィウスは再びアズハルトの自室の前に立っていた。
前回の訪問以降、アズハルトは観念したのか反省したのか、素直に次期国王としての務めを受け入れ始めたらしい。
昔から弟の強情さには手を焼かされていたから、今回も長期戦になると思っていた。安心するよりも先に、所詮その程度の意志かと嘲笑う自分に気づき、リヴィウスはノックの手を止める。
(傀儡は、扱いやすいほうがいいんだ。……喜ぶべきだろう)
エミールに与えられた自分の役目は、『次期国王を傀儡にすること』
アズハルトは、よく躾られた犬のようにリヴィウスの言うことは――大抵――聞く。そうなるように、彼は仕向けた。忌まわしい離宮から出ることが叶い、遠まわしに世話役の位置をあてがわれた日から十年―――そうなるように、育てたのだ。
それなのに、どうしてもリヴィウスはアズハルトを『道具』としてよりその忌々しい『人格』を見てしまう。
早くこの苛立ちを消して、感情を揺らさないようにしたかった。そのための一歩として、彼は次期国王の私室の扉を叩く。
「陛下」
「兄上!」
勢いよく開かれた戸を避けると、中からアズハルトが飛び出してきた。まるで、何事も起こらなかったかのような無邪気さで、兄を見つめる。
「兄上、やっと来てくれたんですね!」
前とは、明らかに様子が違った。疑問と苛立ちを押し隠し、リヴィウスは色彩だけは同じ瞳を冷ややかに見返す。
「もう我侭は言いません。ちゃんとやります。だから……っ」
「だから、『元の兄上』に戻って、ですか?」
やはり強情だ。何度言っても聞かない。理解しない。自分の望みばかり押し付ける。
穏やかさをまとう気も失せて、突き放した口調で続けた。
「何度も言わせないでください。私は、臣下です」
昔とは違うのだと、ことさらに冷たく笑んでやる。身分が違う、立場が違う――もはや情の通う関係ではない、と。
「それに、もう―――正式に、私は陛下の兄ではありません」
そして、今日告げる予定だった言葉を紡ぐ。
「祭儀長との養子縁組の話がまとまりました。手続きも、もう済ませています」
現在の祭儀長は家柄でその役職に就いたような男であり、可も不可もない能力の持ち主で、権力争いとは無縁な日和見主義者だ。権謀術数には長けておらず、またこれ以上の立場も望んでいない。彼は、使う頭があればいくらでも使えるリヴィウスという道具を、持て余して放っておいてくれるだろう。だから、前々から交渉していた。
「だから―――」
だから、もう兄と呼ぶなと、
もはや臣下の態度ではないことすら忘れて、言葉を叩きつけようとした。
「兄上、何を言っているのですか?」
しかしそれは、どこか幼い口調に遮られる。
「これは命令ですよ、『兄上』」
それは丁重でいて、どこまでも傲慢な、君主の言葉。
リヴィウスは『陛下』と、『私は臣下です』と繰り返した。
だからこれは――敬愛する兄の言いつけを守り、かつ、兄を失わない――アズハルトにとって、とても理にかなった答えだったのだ。たとえ、それが歪んでいたとしても。
「貴方は、私の『兄上』です」
晴れやかな声は、一種の狂気さえ孕んでいる。懇願の中に潜む隠しようもない傲慢さに、リヴィウスは吐き気を覚えた。
「結局―――お前はっ!!」
いつの間にか傍に擦り寄っていた長身を突き飛ばす。
「縋れれば偽りでもいいと…ッ」
溢れ出た罵声は、思ったよりも湿った響きを帯びていた。
この感情が怒りなのか、それとも他の―――否、これは怒りだ。怒りなのだと言い聞かせる。それ以外に、この激情に説明がつかなかった。
「でも、私は……もう耐えられません…ッ!」
よろけ、力無くへたりこんだ次期国王は、それでもなお『兄上』に縋る。
「兄上が、兄上が傍にいないなんて……ッ…兄上、あにうえ……」
元より、他に縋れるものなどないのだ。兄の庇護下で大切に大切に育てられてきた彼は、兄以外との繋がりを持たない。そして、それを必要ともしなかった。
だから、兄がいなければ―――アズハルトは、一人になる。
一人での立ち方を、リヴィウスは弟に教えなかった。そのせいで、この国を背負うことになる男は、この作り物ばかりの世界で生きるすべを持たない。
(……そうなるように、僕はアズを育てた)
だからこの茶番も、起こるべくして起こったことだ。
前王の遺言と同じで、始めからほとんど決まっていたこと。
どんなに突き放しても、アズハルトは『兄上』を必要とする。そうしないと、『自分』が生きていけないから――――
だから自分は、それを利用すればいい。
親友の願いを、叶えるために。
「……わかったよ、アズ。僕の負けだ」
リヴィウスの笑みが、冷ややかなものから、暖かなものに変わる。『兄上』だった頃のものと、同じ表情だ。両方演技だったのだから、切り替えることなど容易い。
……捨てたくてたまらなかった仮面は、忌々しいほど顔に馴染んだ。
「でも他の者たちの前ではしめしがつかないから、二人きりの時だけ僕は『僕』でいるよ」
『兄上』に戻ったことを確信させるために、垂れた頭を優しく撫でる。呆けた顔に手を伸ばし、目の端の雫を拭った。
「それでもいいかい?」
それは偽りの、裏に嫌悪と利己を宿した優しい仮面。
しかしアズハルトは、歓喜の表情で頷いた。
すべて、決めた通りに、決まった通りにことは運んでいる。
それでも―――苛立ちは胸の中で澱んでいった。
それが何故なのかわからないまま、リヴィウスは捨て去ったはずの『兄上』の仮面を再び被る。
「良い子だね、アズ」
そしてまた―――胸の内がどろりと澱んだ。
------------------------
兄上があくどくてすみません。
アズが気持ち悪くてすみません。
これで二人の関係も少しは安定?するかなーなんてことはないです。
むしろ無理が祟ってこれからどんどんひどいことに…
もうやだこの兄弟。でも私は好き!
…よろしければ、この先も見てやってください。よろしくお願いします。
前回の訪問以降、アズハルトは観念したのか反省したのか、素直に次期国王としての務めを受け入れ始めたらしい。
昔から弟の強情さには手を焼かされていたから、今回も長期戦になると思っていた。安心するよりも先に、所詮その程度の意志かと嘲笑う自分に気づき、リヴィウスはノックの手を止める。
(傀儡は、扱いやすいほうがいいんだ。……喜ぶべきだろう)
エミールに与えられた自分の役目は、『次期国王を傀儡にすること』
アズハルトは、よく躾られた犬のようにリヴィウスの言うことは――大抵――聞く。そうなるように、彼は仕向けた。忌まわしい離宮から出ることが叶い、遠まわしに世話役の位置をあてがわれた日から十年―――そうなるように、育てたのだ。
それなのに、どうしてもリヴィウスはアズハルトを『道具』としてよりその忌々しい『人格』を見てしまう。
早くこの苛立ちを消して、感情を揺らさないようにしたかった。そのための一歩として、彼は次期国王の私室の扉を叩く。
「陛下」
「兄上!」
勢いよく開かれた戸を避けると、中からアズハルトが飛び出してきた。まるで、何事も起こらなかったかのような無邪気さで、兄を見つめる。
「兄上、やっと来てくれたんですね!」
前とは、明らかに様子が違った。疑問と苛立ちを押し隠し、リヴィウスは色彩だけは同じ瞳を冷ややかに見返す。
「もう我侭は言いません。ちゃんとやります。だから……っ」
「だから、『元の兄上』に戻って、ですか?」
やはり強情だ。何度言っても聞かない。理解しない。自分の望みばかり押し付ける。
穏やかさをまとう気も失せて、突き放した口調で続けた。
「何度も言わせないでください。私は、臣下です」
昔とは違うのだと、ことさらに冷たく笑んでやる。身分が違う、立場が違う――もはや情の通う関係ではない、と。
「それに、もう―――正式に、私は陛下の兄ではありません」
そして、今日告げる予定だった言葉を紡ぐ。
「祭儀長との養子縁組の話がまとまりました。手続きも、もう済ませています」
現在の祭儀長は家柄でその役職に就いたような男であり、可も不可もない能力の持ち主で、権力争いとは無縁な日和見主義者だ。権謀術数には長けておらず、またこれ以上の立場も望んでいない。彼は、使う頭があればいくらでも使えるリヴィウスという道具を、持て余して放っておいてくれるだろう。だから、前々から交渉していた。
「だから―――」
だから、もう兄と呼ぶなと、
もはや臣下の態度ではないことすら忘れて、言葉を叩きつけようとした。
「兄上、何を言っているのですか?」
しかしそれは、どこか幼い口調に遮られる。
「これは命令ですよ、『兄上』」
それは丁重でいて、どこまでも傲慢な、君主の言葉。
リヴィウスは『陛下』と、『私は臣下です』と繰り返した。
だからこれは――敬愛する兄の言いつけを守り、かつ、兄を失わない――アズハルトにとって、とても理にかなった答えだったのだ。たとえ、それが歪んでいたとしても。
「貴方は、私の『兄上』です」
晴れやかな声は、一種の狂気さえ孕んでいる。懇願の中に潜む隠しようもない傲慢さに、リヴィウスは吐き気を覚えた。
「結局―――お前はっ!!」
いつの間にか傍に擦り寄っていた長身を突き飛ばす。
「縋れれば偽りでもいいと…ッ」
溢れ出た罵声は、思ったよりも湿った響きを帯びていた。
この感情が怒りなのか、それとも他の―――否、これは怒りだ。怒りなのだと言い聞かせる。それ以外に、この激情に説明がつかなかった。
「でも、私は……もう耐えられません…ッ!」
よろけ、力無くへたりこんだ次期国王は、それでもなお『兄上』に縋る。
「兄上が、兄上が傍にいないなんて……ッ…兄上、あにうえ……」
元より、他に縋れるものなどないのだ。兄の庇護下で大切に大切に育てられてきた彼は、兄以外との繋がりを持たない。そして、それを必要ともしなかった。
だから、兄がいなければ―――アズハルトは、一人になる。
一人での立ち方を、リヴィウスは弟に教えなかった。そのせいで、この国を背負うことになる男は、この作り物ばかりの世界で生きるすべを持たない。
(……そうなるように、僕はアズを育てた)
だからこの茶番も、起こるべくして起こったことだ。
前王の遺言と同じで、始めからほとんど決まっていたこと。
どんなに突き放しても、アズハルトは『兄上』を必要とする。そうしないと、『自分』が生きていけないから――――
だから自分は、それを利用すればいい。
親友の願いを、叶えるために。
「……わかったよ、アズ。僕の負けだ」
リヴィウスの笑みが、冷ややかなものから、暖かなものに変わる。『兄上』だった頃のものと、同じ表情だ。両方演技だったのだから、切り替えることなど容易い。
……捨てたくてたまらなかった仮面は、忌々しいほど顔に馴染んだ。
「でも他の者たちの前ではしめしがつかないから、二人きりの時だけ僕は『僕』でいるよ」
『兄上』に戻ったことを確信させるために、垂れた頭を優しく撫でる。呆けた顔に手を伸ばし、目の端の雫を拭った。
「それでもいいかい?」
それは偽りの、裏に嫌悪と利己を宿した優しい仮面。
しかしアズハルトは、歓喜の表情で頷いた。
すべて、決めた通りに、決まった通りにことは運んでいる。
それでも―――苛立ちは胸の中で澱んでいった。
それが何故なのかわからないまま、リヴィウスは捨て去ったはずの『兄上』の仮面を再び被る。
「良い子だね、アズ」
そしてまた―――胸の内がどろりと澱んだ。
------------------------
兄上があくどくてすみません。
アズが気持ち悪くてすみません。
これで二人の関係も少しは安定?するかなーなんてことはないです。
むしろ無理が祟ってこれからどんどんひどいことに…
もうやだこの兄弟。でも私は好き!
…よろしければ、この先も見てやってください。よろしくお願いします。
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